北國紀行 その1 青春18きっぷ

一日2,300円で列車に乗り放題というとんでもない切符をJRは販売している。

青春18きっぷ」という名の破格の切符は、青春を感じたい人間ならだれでも購入することが可能である。別に18歳しか購入できないきっぷと言うわけではない。

大学2回生の9月、青春真っ盛りの僕は、一人旅というロマンあふれる行動を行うために、切符片手に列車へ乗り込んだ。最終目的地は、北海道の函館である。

 

大学のある大阪から、午前10時の新快速に乗りまずは米原へ。

米原からは東海道線普通列車に乗り換え関ケ原。さらに快速に乗り換え名古屋から豊橋へ。こういった具合に鈍行列車を乗り継いでいくのが、青春18きっぷの旅である。

この切符は鈍行列車にしか乗ることができない。新幹線や特急列車なんてもってのほかである。なんともお尻に良くないきっぷと言える。2,300円で乗り放題させてもらっている身なので文句は言えないのだが、JRもそこはケチらないでほしい。

いくら19歳の青春真っ盛りの若者と言えど、鈍行列車に1日中乗っていれば、お尻へのダメージは相当なものである。

浜松を過ぎ、実家のある伊豆長岡に着くころにはすでに夕方。実に7時間以上も列車に揺られていたわけである。

青春とは、辛く苦しいものなのである。

 

実家でお尻をいたわった翌日、旅を再開した僕は、東海道線と山手線を乗り継ぎ新宿へ。新宿23時発の「ムーンライトえちご」へと乗り込んだ。

JRはとてもやさしい会社で、青春18きっぷを使う人間はホテルにも泊まることのできない貧しい人間なのだろうと、深夜快速列車を用意してくれている。

列車の名前のとおり、行先は新潟県である。

 

新宿を出発した列車は、朝の5時という信じられない時間に新潟に着く。腐れ大学生にとっては、朝の5時は起床時間ではなく就寝時間である。

夜行列車と言えば、寝台列車をイメージしがちだが、ムーンライトえちごにそんなものはない。狭い座席一択である。

この日は、学校の夏季休業中と重なることもあり、満席だった。

つまり前にも後ろにも、当然横にも人はいる。

6時間以上、ぎゅうぎゅう詰めの列車に乗って、僕は新潟へ向かう。青春と言うのはつらく苦しいのである。

 

本来であれば就寝時間である朝の5時過ぎ、僕は新潟についた。

寝ているのか起きているのかわからない状態の6時間はまさに地獄であり、列車から降りた僕は、シンナー中毒者のようにふらふらと新潟駅構内を彷徨っていた。

周りを見ると、ムーンライトえちごから降りた乗客は、みんなふらふらしていた。

 

新潟についたからと言って、旅はここで終わりではないのである。

むしろここからがスタートと言っていい。

 

初めにも書いたが、今回の旅の最終目的地は、北海道の函館である。

修学旅行の時に見た美しい夜景をどうしても見たかった。

東北各地を巡りながら、函館を目指し北上していくのである。

 

通勤客でごった返す羽越本線へ乗り込み、まずは日本海を北上し山形へと向かっていく。