台湾リベンジ 第8夜 多納

2008年1月22日

お元気でしょうか?そちらは極寒の中、後期試験で苦しんでいることと思います。

日本を離れ今日で1週間、何の連絡もないのでさぞかし心配していたことと思いますが、僕はまだ生きています。台北から西へまわり、台中では宿の料金交渉で値段を吊り上げられ、嘉義では夕飯を食いに言っただけで地上げ屋だと勘違いされ、阿里山ではDaividに恋の邪魔をされ、高雄ではストパーに頭皮をやられ…。おそらくなにを言っているかわからないと思いますが、そんなわけで現在、僕は台湾南部の山中にある多納という村にきています。

高雄から電車で塀東へ、そこから1日3本あるバスで多納まで2時間半でつけるんですぅ!

などと『地球の歩き方』は言っていましたが、実際にはそんなバスは存在せず、途中のよくわからない野犬だらけの村で下ろされ生死の境を彷徨う始末…。偶然出あった優しい台湾人家族(その名もHappy一家)の車に乗せてもらわなければ、僕は間違いなく死んでいたでしょう。

そんなHappay一家とは先ほどお別れしたのですが、実に親切なご家族でした。昨晩は、僕が宿無しだとわかると自分たちの泊まる民宿に頼み込んで部屋を確保してくれました。今日は今日で、多納の村に着くと何よりも先に僕の今夜の宿を探してくれました。その後は車で村やその周辺の名所を一緒に案内してくれました。しかも、お昼ごはんに入った食堂では僕の分の代金まで払おうとしてくれました。

どうですか、この親切っぷり。果たして我々にここまでの親切が出来るでしょうか?しかも外国人に対してです。身長が2m近くあって、天パで、中国語も英語もまったく解さず、連合赤軍のようにぼろぼろの身なりをした不審人物にです。台湾は親日的であるとよくいわれているし、たしかに前回の旅でもたくさんの台湾人に親切にされたけど、今回の件は別格です。

これだけの親切を受けておいて、何もしなければ日本人として恥ずかしい。そう思って最後のお昼ごはん代は僕が払ったのですが、これだけじゃ全然お返しになってないです。もっと何か出来ることがあったんじゃないかなあ、と今はそんな気分です。

別れのとき、彼らと一緒に写真を撮り、メールアドレスを交換しました。そして、村の入り口で彼らの車を見送りました。見えなくなるまでずっと手を振り続けました。彼らもまたずっと手を振りかえしてくれました。

 

さて、いま僕がいる多納村の紹介をしましょう。

ここは、ルカイ族という原住民が暮らす村で、平べったい石を積み上げて建てられた家が立ち並ぶ何とも不思議な雰囲気のするところです。

村自体は本当に小さく、20分ほどで隅々までまわれてしまいますが、本当にこの村は良いのです。

村の入り口では、まず日本語で書かれた村の地図があるのでよく確認をしておきましょう。

ここから、まずは右のほうへ進んでいきます。目の前に見えてくるのがこの村唯一の小学校。原住民風の独特の外観をした校舎が非常に印象的です。

その横を通り抜けしばらく行くと家と家の間に木でできた階段が見えてくるのでさっそく上ってみましょう。

村は周りを山に囲まれており、ちょっと高台に上ると村の様子を一望できます。

前方に不思議な感じの建物があります。案内板を見ると、おっ、切り取った首を祭った場所ですか。さすが原住民。首狩の風習があったんですね。

ガサガサ

お、草の陰でなにかが動きましたな。

…。

よし、首を狩られる前に撤収です。

さて、再び入り口に戻りメインストリートを歩いてみます。

この道の両側にはちょっとした食堂や土産物店が立ち並んでおります。

おそこには屋台があります。なにか頼んで見ましょうか。

魚の丸焼き!これは豪快。味もまずまず。こっちは鹿の肉!さすがは原住民の村。実に野性味あふれる料理が出てきます。

さらに、井戸端会議をしているおばあちゃんや昼間から酒を飲んで将棋をさしているおじさんたちを眺めながらメインストリートを歩いていくと、例の石を積んだ昔ながらの家が見えてきます。ここは昔の村長的ポジションの家。よーく見るとけっこう隙間があるんだけど寒くはないのかしら。しかも虫とか入ってきそうだし…。

つづいてメインストリートの突き当りを右へ、少し行くと、出てきました本日のお宿、阿拉斯民宿。ここのおばちゃんは日本語がぺらぺらでなかなか豪快な人です。でもまだ明るいので宿の中には入らずに、とりあえず宿の敷地内を突っ切って向こう側へ出ましょう。

『にいちゃん!そっちは崖しかないしあぶないぞな!』

「いや、向こう側の景色を眺めるだけですから」

『ほうか?まあ落ちないようにきをつけろよ』

宿のおばちゃんに見つかってしまった。このおばちゃん、日本語ぺらぺらな上にめちゃめちゃ元気なので、僕を見つけるととにかく何かを話しかけてくるのです。

さて噂の崖ですが、ここからは麓に広がる田園風景が望めます。椰子の木の向こう側に広がる風景は、東南アジアよう。なんとも南国らしくいいものです。

ちなみにこの道を降りていくと先ほどの田園風景の中へ、そしてその奥の雄大な渓谷へと行くことが出来ます。

この渓谷がまた良いのです。足を川に投げ出し、大きな岩の上で寝転ぶ。雄大な自然の中では人間なんてちっぽけな存在なんだ、と感傷に浸れること間違い無しです。

 

さて、気づけばもう夕暮れです。あたりの山から獣の鳴き声が聞こえてきました。襲われる前に急いで村へ戻りましょう。

あれ、学校帰りのちびっ子がいます。この村の子供たちってやたらと人懐っこいくて、こっちがカメラを向けると何も頼んでいないのにポーズを決めてくれます。撮影が終わると『見せて~!』とわらわら集まってきて、僕の肩やら背中やらに抱きつきながらカメラを覗いてきます。

何とも平和な村だ。日本でこんなことしたら、あっという間に通報されてしまいます。

ウソばかり書いて僕をだまし続けている『地球の歩き方』に、『なんとも独特の雰囲気の漂う村』と書かれているけれど、その一文だけは認めようと思います。確かにこの村は、他のどの街にもない独特の雰囲気が漂っています。人懐っこい子供たち、道端でおしゃべりに興ずるおばあちゃんたち、高台から村を眺めていると聞こえてくる学校のチャイム。まるで時が止まったかのような不思議な感覚にとらわれるのです。

あっというまに夜になりました。山奥の村だけにあたりは真っ暗。見上げると見たことのないほどの一面の星空。

と、言いたいところですが残念ながら今日は曇りです。人生そんなにうまくはいかないものです。

耳を済ませると虫たちの鳴き声が聞こえてきます。そして、それに混じって獣の鳴き声もどこからともなく聞こえてきます。はっきりいって怖いです。

多納村とはそんなところです。