続 北國紀行 その4 函館本線の話

札幌から函館へ行くには、特急列車が一番早い。それでも3時間はかかるが、常人はこの手段を選ぶことだろう。

深夜バスも走っている。函館まではおよそ5時間だ。これを選ぶのは、自分を痛めつけたいマゾっけのある人か、自分に厳しい試練を与えたい修行僧くらいである。僕はマゾでも修行僧でもないので、この手段を選ぶはずがない。

第3の手段としては、青春18きっぷを使って、鈍行列車のみで10時間近くかけて行く方法がある。これは、お金のない腐れ大学生が好んで使う手段なので、僕は喜んで第3の手を選ばせていただく。

 

勢い勇んで、札幌駅から列車に乗り込んだものの、深夜バスで深手を負った身ではやはり厳しい行程だった。

結局2時間ほど行ったニセコで無念のリタイアとなり、羊蹄山の麓にある救護施設(宿)に担ぎ込まれたのである。

 

翌朝、しっかりとしたベッドで英気を養った僕は、ニセコ駅から旅を再開した。

昨夜同宿だったカップルが同じ車両にいるのだが、僕らはお互いに深く干渉したりはしない。

カップルは二人だけの時間を僕に邪魔されたくないだろうし、僕も彼らの邪魔をする気は毛頭ない。惨めになるだけである。

というか、カップルでユースホステルに泊まるんじゃない。

18きっぷで旅をするんじゃない。

ニセコプリンスホテルに泊まって、特急列車で旅をする立派な人間になりなさい。

鈍行列車は、さびしい腐れ大学生に任せておけばいいのだ。

僕は心の中でカップルに説教をかまし大満足だ

台風の影響で昨日の午後から雨風が強かったのだが、本日は台風一過の快晴。

羊蹄山を眺めながら列車に揺られていく。

 

3時間もすると長万部についた。

ここでJR北海道あるあるである「乗り換えまでの長時間待ち」に遭遇だ。でも、今回は2時間だから大したことはないよ。

長万部駅の外へ出ると、本当に何もない、閑散とした街が広がっている。

噂のカップルもあまりの何もなさに、呆然としている。何を言うか。君たちには二人の時間があるではないか。二人ならどんな困難でも乗り越えられるではないか。こっちは独りぼっちなんやで。

そういえば、東京理科大学の学生は、1年生の間はここで強制的に暮らさなくてはならないと受験生の時に耳にしたことがある。地獄である。

札幌にしても函館にしても、どっちに行くにしろ列車で4時間近くかかるなんて。理科大の学生は修験道者かなにか?齢19にして悟りでも開こうとしているのかしら?

 

長万部を出ると、列車は海沿いを走り始める。

これは津軽海峡かしら?

よくわからないが、とにかくきれいな景色である。

函館まではまだ3時間ほどかかる。

綺麗な景色を眺めながら、列車に揺られことにしよう。