北國紀行 その2 山形というところ
朝の通勤通学の時間帯と言うこともあり、列車には女子高生がたくさんのっていた。
女子高生を眺めることで、初めの2時間くらいはとても充実した鈍行列車ライフを過ごすことができたのだが、女子高生がいなくなってからは、車窓の日本海の風景に飽きたこともあり、地獄のような時間を過ごすことになった。
そして、気づくと山形県に入っていた。
羽越本線から磐越西線への乗り換えに2時間以上かかる余目駅では、まわりに何もなくじっとホームのベンチで時を過ごし、また列車に揺られる。
僕は修行僧なのだろうか。
そして東根市の神町駅で下車し、今宵の宿である東根ユースホステルへ着いたのは午後の4時。
新潟駅から10時間。実に長い旅路であった。
青春の旅路と言うのはこうも長く苦しいものなのだろうか。
ユースホステルというのは、旅人との交流を目的とした宿である。
にもかかわらず、本日の宿泊客は僕一人で、仕方なく宿のご主人と温泉に行くなどして過ごした。
そもそも東根市と言う街にわざわざ泊まりに来るやつなどいるわけがないので、旅人との交流など夢のまた夢である。
どこだよ、東根市って。
「しずかさや いわにしみいる せみのこえ」
山寺駅で列車を下り、門前街を眺めながら山寺(立石寺)へと歩いていく。
お土産物屋や蕎麦屋が立ち並び、実に観光地然としている。
何だかんだ、大阪からここまで列車に乗りっぱなしで、観光地は初めてであった。
観光とは旅行者の義務である。
義務を果たすこともなくここ数日を過ごしていた僕は、旅人失格といえる。
山寺は、その名のとおり山にへばりついたお寺で、一番高い場所にある建物までは階段を40~50分は登らなければならない。まさしく苦行である。
しかし、てっぺんからの景色は大変素晴らしく、苦しい登山をしたかいがあったなあといえる。
9月ではあるが、なんとなく、蝉の声も聞こえてくる気がする。
「しずかさや いわにしみいる せみのこえ」
芭蕉に思いを寄せながら、蝉の声に耳を傾ける。芭蕉リスペクトである。
山寺を十分観光し、門前町でそばをすすり、お土産物屋さんを覗き、実に旅人らしいふるまいを過ごし満足したところで、再び列車の旅の始まりである。
あらためて仙山線へ乗り込み、終点の仙台駅で下車する。
仙台駅前はビルが立ち並び大変な都会である。
ここまで通過してきた新潟や山形などと比べ物にならないレベルの街である。
東根なんぞ仙台の足元にも及ばないと言っていいだろう。
なぜ東根なんぞに行ったのだろうか。
しかし、ここまで田舎街ばかりを通過してきた僕に大都会仙台はまぶしすぎる。
「みどりの窓口」で青春18きっぷを追加で購入し、わずか20分ほどで仙台を後にした。
余談だが、青春18きっぷは1日2,300円の切符が5日分セットでしか販売されていない。JRはケチなのである。
すぐさま乗り換え、本日の目的地である平泉で下車。
駅の外へでると、すっかり夕暮れ。
仙台から東北本線を乗り継ぎやってきた平泉の街は、当たり前ではあるが東北の盟主である仙台と比べると、格段に田舎だった。